著者:長池涼太:HSPの学び舎運営・HSP研究/エビデンスを発信するブロガー
この記事には広告を含む場合があります。
記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。
2020年以降HSPがかなり広まりましたが、同時に間違った情報なども拡散され情報の取捨選択には苦労しています。
そんなHSPの中でも特に発信されているテーマの一つが、HSPの子供バージョンの『HSC』という概念。アーロン博士も提唱したもので実際にHSCという概念もありますが、HSCについてもかなり誤解が広まっている印象です。僕のも周りで言えば『不登校』とセットになってHSCが出てくることも多いですがそこについては強い違和感を覚えました。
今回は研究の知見も交えて改めてHSCについて考えてみました。
Aron & Aron (1997)は高い敏感性をもつ成人(Highly Sensitive Person: HSP)を対象とした研究から,彼らの敏感さの背景には感覚処理感受性(sensory processing sensitivity: SPS)の高さがあると提唱し,敏感な個人は刺激感受性の高さや感情反応性の強度に加え,情報処理の深さなどを特徴とすると報告している。また,HSPに関する一連の知見を援用してこのような特徴をもつ子どもをHighly Sensitive Child(HSC:Aron, 2002/訳 明橋,2015)と称し,子どもの敏感さのため養育に困難を感じている保護者などを対象として育児支援のキーワードとしても使われている(長沼,2017)
敏感性の高い子どもと環境からの影響:感受性反応理論からの示唆
岐部 智恵子 (お茶の水女子大学人間発達教育科学研究所)
あくまで対象が大人ではなく子どもというだけで、内容的な物はHSPもHSCも同じです。
感覚処理感受性(易興奮性、低感覚閾、美的感受性)が高い、環境感受性が高いなどですね。
基本的な認識はHSPと同じで大丈夫です。
2020年の春ごろからHSPがテレビに取り上げられるなどして知名度が上がり、一部の人(主に専門家)の間では『HSPブーム』とも呼ばれました。
HSCもその流れに乗って知られるようになり、各SNSでもHSCというワードを見かけることが一気に増えた印象です。
茨城県内など地方でもHSCについては、主にHSCの子のお母さんがコミュニティを作ってそこでHSP交流会などを行っていることも多いようです。
HSPは学校が苦手
HSPの功罪|研究にもとづくHSP情報サイト
そのようなことはありません。学校が苦手な生徒や不登校の生徒に対して、安易にHSP/HSCというラベルを貼るのは不適切です。HSP/HSCへのスティグマ(差別、誤ったレッテル)につながります。支援者はHSP/HSCというラベルを貼ることよりも、その生徒がどのような苦痛を訴えているのか、どのような(悪い)環境に置かれているのかをアセスメントし、それに応じた支援を検討する必要があるでしょう。子どもの感受性気質は、支援を検討する際の一つの要素であって、ラベルを貼ること自体が目的になるべきではないように思います。
ネット上でHSCの情報を観てみると必ずと言って良いくらい『HSC=不登校』のような構図になっています。
HSCの子の中に不登校がいるのは事実かもしれませんが、HSC(HSP)が学校が苦手というのは誤りですし少なくとも実証されていません。
あくまでHSC(HSP)はネガティブな要素ではなく「良くも悪くも環境に影響されやすい」ということなので、逆に言えば良い環境下では良い方向に作用します。
この研究では、学校現場でのレジリエンス心理教育プログラム(SPARK resilience program)が、子どもの感覚処理感受性によって調整されるのかどうかを検討しました。この研究で明らかになったのは、感受性の高い子どもは介入プログラムの恩恵を受けやすいということでした。具体的には、感受性が高い子どもほど、介入の前後で自尊感情が高まり、抑うつ症状が低下しました。この研究が示すように、介入効果を検討する際には環境感受性の個人差を考慮することが有益な情報をもたらすかもしれません。
日本人のHSP研究|研究にもとづくHSP情報サイト
このように学校における教育プログラムなどが感受性の高い子ども(HSC)ほど良い影響があるという研究結果もいくつか出ています。
悪い影響も受けやすいと言えますが、学校の環境が合っていればよりその恩恵が受けやすいとも言えますね。
特に高校進学は環境が大きく変わることも多いので、少し気を配る必要がありますね。
なにより気になるのが僕が見た限り、HSCの発信者で公式の研究の知見を使う・引用している人ってほとんど見たことがありません。主にFacebookやアメブロに多い印象ですが、各SNSにいる『インフルエンサー』の発信をベースにしているため、HSCについてかなり歪んで伝わっているのが現状ですね。
実際アメブロにおいては研究の知見に触れている発信はほとんど見たことないですし、Facebookも同じです。僕も可能な限り研究者の発信や論文を参照するように気を付けています。
アーロン博士に触れている人はそれなりにいますが、アーロン博士の研究はそもそも古い知見も多いです。
もちろんアーロン博士の研究がベースになっていますが、『今の』HSPを語るうえでは、むしろいかにアーロン博士以外の研究に触れるかがポイントになってきます。
またHSCに関連して、
- HSS(活動的なHSP)
- HSE(外向的なHSP)
なども出回っていますが、これらは研究などにおいては言及や立証はされていません。そのため概念としての存在すら怪しいです。一部のインフルエンサーやHSPカウンセラーが勝手に発信しているだけなのでスルーするのが望ましいです。
活動的や外向的などHSPと本来関係ない要素を混ぜて考えても余計ややこしくなり、それがかえって子どもに適切な処置や対応ができない要因にもなります。
HSSはアーロン博士も少し言及(チェックリストも一応ある)していますが研究をしっかりやったというレベルではありません。
HSEもアーロン博士のサイトで少し触れてはいますがそれだけです。
本来少ない情報をインフルエンサーやHSPカウンセラーが歪めて広めているのでタチが悪いです…。
僕は独身で子供もいないですが、HSCの親およびHSC界隈のインフルエンサーが言う子育て論には違和感があります。
例えばHSC(HSP)あるあるで「誰かが怒られているのを見るのが辛い」というのがありますが、これが歪んで『叱るのを完全に放棄している』親が多いように感じますし、それが良しとされている印象があります。
これが将来的に『叱れない親』を生み出すのではないでしょうか?HSCに限らずですが子育てにおいて『叱る』というのはかなり技術がいると思いますが、同時にかなり重要だと思えます。このあたりは親の力量が試されますね。
もちろん叱り過ぎによる弊害も多いです。いわゆる体育会系だと暴力・体罰もあったりでその結果不登校になったり精神を病んだりしますからね。
- 2020年以降『HSPブーム』とも呼ばれるくらいHSP(HSC)がメディアでも取り上げられ知名度が上がった。
- しかしそれゆえにHSP・HSCが公式の研究と比べるとかなり歪んで伝わってしまった。
- 『HSC=不登校』というのがよく言われるが実は立証されてはいない。(研究で言及がない)
- HSCは学校が苦手とは言い切れず『環境』によって良い方向にいくこともある。
- アメブロなどでHSCの発信を見ると公式の研究知見を使っていたり、知っている人がほとんどいない。
- HSCの子育ては単に叱らなければ良い問題ではない。叱る必要がある場面もある。
今回はHSCに絞って思うところを書きましたが、やはりHSP全般についてかなり歪んだ形で世間に伝わっているなとあらためて感じました。
正直僕もHSPの研究的知見をちゃんと知ったのは2020年の後半からとだいぶ後だったので、この点はHSPの発信者として反省すべき点とも思っています。「HSCだから」という理由で特別な配慮をするというのはいかがなものかと思います。HSCだからではなく、このような特別な配慮というのは本来教育において子どもに必須な物ではないでしょうか?
HSCに必要な配慮は
全ての子どもに必要な配慮です。
(つまり「特別」である必要はありません)「全ての子ども」に対して怒鳴ったりせず、
プレッシャーを与えたりせず
HSCは特別な支援が必要?!|YH
子どもがのびのびイキイキとできる環境をお願いしたいです。
講師・カウンセラーをやってる方のnoteの記事ですが僕が言いたいのは要はこれです。HSCに必要な配慮はHSCではなく、『全ての子ども』に必要ではないでしょうか?