著者:長池涼太:HSPの学び舎運営・HSP研究/エビデンスを発信するブロガー
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2020年以降、HSPの知名度が上がってきて同時にHSPの活動をしている人が増えてきました。
ただ、そんな中で様々な『資格』や『肩書き』を持つ人が出てきました。資格や肩書きがあると良さそうに見えたり、プロと思えそうですが果たして本当にそうでしょうか?今回の記事ではカウンセラーなどHSP関係でよく見かける資格について考察してみました。
HSPカウンセラー・HSPアドバイザーは誰でも名乗れる
今のところ、『カウンセラー』を名乗ることは誰でもできます。資格によっては、特定の資格を持っていないと名乗れない名称もあります。例えば国家資格の『キャリアコンサルタント』はその名前や似たような名称は有資格者でないと使えません。
仮にキャリアコンサルタントの資格を持ってない僕がそれっぽくキャリアコンサルタントと名乗ったり、「キャリアコンサルやってます!」みたいに名乗ったり宣伝などをすると法に触れる可能性もあります。
職業能力開発促進法に規定されたキャリアコンサルタントでない方は、「キャリアコンサルタント」又はこれに紛らわしい名称(※1)(※2)を用いることができません。これに違反した者は、 30 万円以下の罰金に処せられます。
(※1) 紛らわしい名称としては、「キャリア・コンサルタント」、「キャリアコンサルタント○○(キャリアコンサルタント専門士等)」、「キャリア○○コンサルタント(キャリア形成コンサルタント等)」、「○○キャリアコンサルタント(職業キャリアコンサルタント等)」、「○○キャリコン(標準キャリコン等)」、「キャリアコンサル」等があげられます。
(※2) いわゆる標準レベルのキャリア・コンサルタントであった方についても、キャリアコンサルタント名簿に登録しなければ、「キャリアコンサルタント」と名乗ることができませんのでご留意ください。
「キャリアコンサルタント」名称独占について
ただしカウンセラーは、単にカウンセラーと名乗ることに明確なルールはないため、特に資格を持っていない僕でも名乗ることは一応できます。
ただ、この辺は信用やモラルにも関わるので僕は名乗りません。
前提として今のところ「HSP○○」みたいな名前の公的な資格は一切ないので、そこをご理解いただければと思います。
(そのため、よくいるHSPカウンセラーやHSPアドバイザーなどは資格の権威性が低いのと、場合によっては本人が勝手に名乗ってるだけのこともあります)
HSP周りでよく見る資格
SNSなどでHSPの情報収集をするときに、よく見かける印象の『資格』についてまとめました。資格で全てがわかるわけではないですが、資格があることと信用できるかはある程度分けて考えてもらえればと思います。
資格名 | 資格を取るには | 寸評 |
---|---|---|
HSPカウンセラー (HSPアドバイザーなどもふくむ) | HSPカウンセラー養成講座を受講。値段は1万円から30万円まで様々 | HSPカウンセラー単体で食べていくのは厳しい。実用性はほぼない |
アーロン博士指定のプログラムを 修了したHSP専門コーチ | アメリカで州が定める専門資格を持っていること | 資格を取るハードルは高い。一方でアーロン博士のみでHSPを語ることもできない |
HSPカウンセラー(HSPアドバイザーなど)
HSP関係で特に目に付くのが「HSPカウンセラー」という名称。
似たようなもので「HSP専門カウンセラー」「HSPアドバイザー」と名乗る人もいますが、おおむね同じものと思って良いです。
今のところ、「HSPカウンセラー」はHSPカウンセラーになるための『養成講座』があります。養成講座を受け、終了してからHSPカウンセラーを名乗るのが一般的です。実際にその講座を受けた人の話を聞きましたが、
- HSPの基本
- カウンセリング技術
- ワークショップを用いての自己分析
などを学べるそうです。ただし、
- HSPカウンセラー自体の信ぴょう性
- HSPカウンセラーになるうえでの受験資格などはない
(大学で心理学を学んでなくてもOK。学歴不問つまり誰でもなれる) - HSPの基本はおさえているが、研究の知見までわかっているHSPカウンセラーは現状ほとんどいない(カウンセリングの能力はある)
というのがあるので、一概にHSPカウンセラーが信用できるとは言えないです。
HSP専門○○という資格を短期間で付与する講座が広まっています。HSPが不正確に広まった日本においては、一部で不健全な資格ビジネスが拡大しています。魅力的にみえるかもしれませんが気をつけた方がよいと思われます。なお、HSPに関する公的な資格はありません。
HSPの功罪|研究ににもとづくHSP情報サイト
研究者から見たHSPカウンセラーの印象はあまり良くないようです。
ちなみに『HSPアドバイザー』(HSP○○アドバイザー)という肩書きもたまに見かけますが、講座すらなく本人が勝手に名乗っているだけなので気をつけましょう。
HSPカウンセラー、HSPアドバイザーだからHSPに関して信用できる…ではなさそうです。
ちなみにHSPに限らず、『○○専門カウンセラー』たる資格は次々と発生しています。HSPという文言を含んだ資格で国家資格や公的な資格はないので注意しましょう。
アーロン博士指定のプログラムを修了したHSP専門コーチ及びキャリアコンサルタント
こちらはあまり広く出回っていませんが、アーロン博士指定のプログラムというのがあるそうです。現在(2020年2月時点)日本でこのプログラムを終了しているのは、
- みさきじゅりさん
- 橘 咲希(たちばな さき)さん
の2名のみです。加えて海外で数名いるそうです。特に日本の2名については国家資格でもある『キャリアコンサルタント』を所持しています。
キャリアコンサルタントについてはHSPやカウンセリングから少し外れるので割愛。
詳しくは、厚生労働省内のキャリアコンサルティング・キャリアコンサルタントをご覧ください。
ちなみにこのプログラムを終了、HSPに精通した専門家として掲載されるには、しっかり条件があり、
・psychiatrist(精神科医)、clinical psychologist(臨床心理学者)であるか、もしくはあなたの住む州等で認めている精神保健の専門家のライセンス(免許・資格)を持っていること。(例えばカリフォルニアであれば、Licensed Professional Clinical Counselors (LPCC)、Licensed Clinical Social Workers (LCSW)、Licensed Marital and Family (LMFT)、Licensed Educational Therapists )
・医療関係の専門家であること:精神科医以外の医師(精神科医はセラピストのリストに含まれます)、歯科医師などで州政府の発行するライセンスを持っていること。
・州政府の発行するライセンスを持つ自然療法医(ND)
・PCCレベルのICFの資格認定コーチ(コーチの資格についての情報はこちらをお読みください)
How to Be Listed as an HSP-Knowledgeable Professional
”HSPに精通した専門家”としてリストに載るには
HSPカウンセラーとは比較にならないくらい厳しいですね。なお、みさきじゅりさんについてはHSPの本も出されていますね。
ただし、現在のHSPの研究においてはマイケル・プルース博士や日本では飯村周平先生などアーロン博士以外の研究がむしろ主流です。
アーロン博士一辺倒だと、考えやデータが古いという可能性もあります。
主なカウンセリング・心理学系資格
公認心理士 | ||
臨床心理士 | ||
産業カウンセラー | ||
メンタル心理カウンセラー |
公認心理士(唯一の国家資格)
公認心理士は誕生したのが2017年と比較的新しい資格ですが、心理職関係の資格では唯一の国家資格です。
公認心理師とは、公認心理師登録簿への登録を受け、公認心理師の名称を用いて、保健医療、福祉、教育その他の分野において、心理学に関する専門的知識及び技術をもって、次に掲げる行為を行うことを業とする者をいいます。
(1)心理に関する支援を要する者の心理状態の観察、その結果の分析
(2)心理に関する支援を要する者に対する、その心理に関する相談及び助言、指導その他の援助
(3)心理に関する支援を要する者の関係者に対する相談及び助言、指導その他の援助
(4)心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供
公認心理士とは 厚生労働省
仕事も保健医療、福祉、教育と幅広く対応していくため、かなり格式高い印象があります。
公認心理士は国家資格だけに受験資格のハードルも高く、
A:4年制大学で指定科目を履修し、さらに大学院で指定科目を履修
B:4年制大学で指定科目を履修し、さらに指定の施設で実務経験を2年以上
C:外国の大学において心理に関する科目を修め、かつ、外国の大学院において心理に関する科目を修了
公認心理士とは? ショブメドレー
大学と大学院(指定大学院) で専門的に学んでいるか大学から指定の施設での実務経験が必須のため、誰でもすぐにとれるような資格ではありません。
今の僕では手も足も出ません(笑)
ましてこの条件を満たしたうえで国家試験もありますからね。唯一の国家資格ということで、心理関係の資格では今のところ一番信ぴょう性の高い資格とも言えます。ちなみに指定大学院については各都道府県にあり、例えば茨城県の場合は、
- 茨城大学大学院人文社会科学研究科 人文科学専攻 公認心理師コース
- 筑波大学大学院人間総合科学学術院 心理学学位プログラム
- 常磐大学大学院人間科学研究科 人間科学専攻 第Ⅲ領域:臨床心理学
が該当します。
臨床心理士
現状は、医療機関や教育系の仕事に就くことが多いです。
「臨床心理士」とは、臨床心理学にもとづく知識や技術を用いて、人間の“こころ”の問題にアプローチする“心の専門家”です。
臨床心理士とは|公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会
文字通り「こころ」の問題にアプローチする資格です。最近は学校に「スクールカウンセラー」としても派遣されています。
国家資格ではありませんが1988年から資格認定がされており、これまで約3万名が臨床心理士に認定されています。心理系の資格の中でも権威性の高い資格です。受験資格もきっちりしており、
指定大学院(1種・2種)を修了し、所定の条件を充足している者
臨床心理士養成に関する専門職大学院を修了した者
諸外国で指定大学院と同等以上の教育歴があり、修了後の日本国内における心理臨床経験2年以上を有する者
医師免許取得者で、取得後、心理臨床経験2年以上を有する者 など
受験資格|公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会
公認心理士と同じく臨床心理士も大学や大学院で専門科目を学んでいることが条件です。やはりこちらも素人が簡単になれるものではありませんね。臨床心理士についても公認心理士と同じく指定大学院は一覧になっていますのでご参考に。茨城県の場合は、
- 茨城大学大学院教育学研究科 学校臨床心理専攻
- 筑波大学大学院人間総合科学研究科 心理専攻
- 常磐大学大学院人間科学研究科 人間科学専攻
が該当します。
国家資格ではないですが心理系の資格としてかなり信用度は高いです。
産業カウンセラー
産業カウンセラーの使命は、働く人の上質な職業人生(QWL:Quality of Working Life)の実現を援助し、産業社会の発展に寄与することです。
産業カウンセラー養成講座
カウンセラーの中でも特に産業(仕事関係)に特化したカウンセラーです。会社で心を病む人(うつ病など)はけっこう多く、会社で心を病む人の心の支えになる役割の一つとして産業カウンセラーがあります。産業カウンセラーも国家資格ではなく民間資格ですが受験資格はしっかりあり、
①成年に達した者(注1)で、協会が行う産業カウンセリングの学識及び技能を修得するための講座を修了した者
②4年制大学学部において心理学又は心理学隣接諸科学、人間科学、人間関係学のいずれかの名称を冠する学部又は専攻(課程)の卒業者であって、A群からG群(注2)までの科目において、1科目を2単位以内として10科目以上、20単位以上を取得し、かつ協会が行う産業カウンセリングの技能を修得するための講座を修了した者。ただし、D群からG群の科目による取得単位は6単位以内する
③1)大学院研究科において心理学又は心理学隣接諸科学、人間科学、人間関係学のいずれかの名称を冠する専攻(課程)の修了者であって、A群からG群(注2)までの科目において、1科目を2単位以内として10科目以上、20単位以上を取得していることを要する。ただし、D群からG群の科目による取得単位は6単位以内とする。
2)社会人として週3日以上の職業経験を通算3年以上有し、大学院研究科において心理学又は心理学隣接諸科学、人間科学、人間関係学のいずれかの名称を冠する専攻(課程)の修了者であって、第3条第4号に定めるA群からG群(※1)までの科目において、1科目を2単位以内として4科目以上、8単位以上を取得していることを要する。ただし、D群からG群の科目による取得単位は2単位以内とする。本号に記載の職業経験とは、雇用形態を問わずすべての職業経験をいう。
産業カウンセラー試験
と、基本的には大学や大学院で専門科目を学んでいることが条件です。ただし、公認心理士や臨床心理士と違うのは必ずしも大学などで学ぶことが必須ではなく、『産業カウンセラーの養成講座』があるので、養成講座を受講すれば学歴に関係なく産業カウンセラー試験の受験資格は得られます。
養成講座がある点は独特ですが、とはいえ養成講座の受講も「297,000円」とかなり高額なため、受講や資格取得にはかなりの覚悟が要りますね。
会社に配置されるカウンセラーとして重宝されてます。今は会社とメンタルも結びつきが強いですから。
メンタル心理カウンセラー
通信教育でサクッと取得できます。
心理的に悩める人を社会的観点からもサポートできるようなカウンセラーを育成し、カウンセリング業務に従事する者の有する知識および技能の程度を審査し、証明することにより、職業能力の向上と社会的経済的地位の向上に資することを目的とします。
一般財団法人 日本能力開発推進協会(JADP)
『心理カウンセラー』の名の通り、どことなく権威のありそうな資格ですが、学歴などは不問のため、誰でも取得は可能です。心理学を専攻していない僕でも取得はできます。
公認心理士や臨床心理士を見た後だと簡単そうですね(笑)
誰でも取れます。
もちろん、メンタル心理カウンセラーの資格を取得することでカウンセラーの技術は心理学の知識を持っていることのアピールにはなりますが、現状メンタル心理カウンセラーの資格のみでの独立は難しいです。あくまで基礎と捉えて、産業カウンセラーなどのもっと上のレベルの資格などにチャレンジしましょう。
資格は重要だけど、そこに惑わされないように
- HSPカウンセラーは基本的に誰でもなれため資格の信ぴょう性は微妙(ピンキリ)
- HSPに精通した専門家としての記載(アーロン博士指定プログラムを修了)はハードルはかなり高い
- ただHSPの研究はアーロン博士以外の研究が主流になりつつあるため、アーロン博士一辺倒は逆に信頼に欠ける
- 公認心理士は心理系で唯一の国家資格。まだ就職実績は少ないが、今後教育現場から民間企業まで幅広い分野での活躍が期待できる
- 臨床心理士は民間資格だが、かなり信頼のできる資格。医療系や教育現場の仕事に就くことが多い
- 産業カウンセラーは公認心理士や臨床心理士と違い、学歴の条件を満たしてなくても養成講座を受けて試験に合格すればなれる。ただし30万円近くのお金がかかる
資格についてまとめましたが、もちろん資格があるからと言って実力があったり信ぴょう性があるとは必ずしも言い切れません。とはいえ、特にHSPカウンセラーについてはその名前だけでHSPの方からのカウンセリングの申し込みが来そうですが、カウンセラーは本来相談者に適切な支援をしなければいけないです。間違った方法で支援をすれば相談じゃの状況をより悪化させてしまう可能性もあります。
だからこそ、個人的には安易に資格取得をしてほしくないと思います。ネット上を探せば、今回紹介した以外にも
- ○○カウンセラー
- HSP専門○○
- ○○アドバイザー
みたいな肩書を見かけます。それらのほとんどは勝手に名乗っているだけだったりで、特に権威性や信頼性を保証する藻のではありません。そういう僕も2020年の秋ごろから「茨城県のHSP第一人者」という肩書を使っていますが、その名に恥じないように日々HSPの研究などの知識について勉強しています。
僕も今回の記事を通して、改めて自分の立場や肩書に対して誠実であろうと思いました。