著者:長池涼太:HSPの学び舎運営・HSP研究/エビデンスを発信するブロガー
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- 雑談が苦手
- 本音が言えない
- 断るのが苦手
などこういった文言を「HSPあるある」としてみたことありませんか?
僕は2018年にHSPを知りましたが、そのころからあるもので日々様々なあるあるがSNS上に見られます。
ただ、これらのHSPあるあるって実はHSP関係なく当てはまる人っていないだろうか?
HSPあるあるは誰にでも当てはまる?
HSPは遅刻しにくい。そのようなエビデンスはありません。しばしばネット上で「HSPあるある」として発信される情報の一つです。遅刻しにくいからといって、それをHSPと結びつけるのは不適切です。「HSPあるある」は、個人的な経験をもとに発信されることが見受けられます。その多くは研究的なHSPの考え方とは距離があります。ほとんど誰もが当てはまる内容もあり、自身の性格が言い当てられた感覚を覚えますが、それは心理学ではバーナム効果と呼ばれるものです。「HSPあるある」をもとに、自身がHSPであるかどうかを判断するのは留意した方がよいでしょう。
HSP情報の誤解を紐解く HSPを専門とする心理学者による見解|Japan Sensitivity Research
バーナム効果(バーナムこうか、英: Barnum effect)とは、星座占いなど個人の性格を診断するかのような準備行動が伴うことで、誰にでも該当するような曖昧で一般的な性格をあらわす記述を、自分、もしくは自分が属する特定の特徴をもつ集団だけに当てはまる性格だと捉えてしまう心理学の現象。
バーナム効果 Wikipedia
Xを中心にSNS上には「HSPあるある」と呼ばれるものがあります。
- 人づきあいが苦手でついつい人と距離を取る
- 人に対して弱音が吐けずストレスが溜まる
- あれこれ心配して夜眠れなくなることがある
などがありますが、別にHSPに限らず当てはまる人はそこそこいませんかね?もしくは精神疾患系の人でよくある事案な気がします。
そしてこのような誰にでも当てはまるような話を心理学では「バーナム効果」というそうです。
他もそうですが、HSPあるあるというよりあくまで一定数は当てはまる普通のことなんですよね。
バーナム効果ならHSPは信用できない⁉
バーナム効果というと
- O型はおおざっぱ
- A型は几帳面
みたいな血液型診断も同類になってしまいます。
血液型診断は学術的な根拠はないですが、HSPは学会などでの研究発表の実績があります。
ただ、精神疾患や発達障害などが数十年の研究実績があるのに対して、HSPはアーロン博士が世界で初めてHSPを提唱したのが1996年ごろなのでまだ20年ちょっとの歴史しかありません。
しかも日本でHSPの研究が始まったとなると、まだ数年から10年くらいと言われています。
海外は Sensitivity ResearchというサイトでHSP研究がまとまっていたりなど学術的な根拠もある概念ですが、まだ歴史が浅い点では学術的な実績も少なく、しかもそれが独り歩きして変なHSP診断テストなどが出てしまっています。
ただし、日本もJapan Sensitivity Researchのような日本のHSP研究をまとめたサイトも出てきたので今後に期待。
HSP診断テストは信用できない
HSPを知って間もないころは一度は「HSP診断テスト」をやったことがあるかもしれません。
無料でできて、質問に答えるだけでHSPかどうかがわかるらしいもの。
率直に言うとネット上の大半のHSP診断テスト、チェックリストは信用できないです。
というのもHSP診断テストが公式には存在せず、研究論文上では「HSP尺度」という名前で存在しています。
環境感受性の気質的側面(感覚処理感受性)を測定するための日本語版HSP尺度を紹介します。著作権の関係上、尺度の項目は全て記載しません。詳細は元の論文をご覧ください。なお、英語版の尺度については、こちらのサイトで知ることができます。※HSP尺度は、HSPであるかどうかを「診断」するものではなく、またその基準もありません。
環境感受性の心理尺度|Japan Sensitivity Research
「尺度」自体はチェックリストに近い意味ですが、HSPかどうかを判断するものではなくあくまで参考程度の意味合いが強いです。
しかしそれが独り歩きして、ネット上の多くのHSP診断テストやチェックリストが「〇個以上当てはまったらあなたはHSP(もしくはHSPじゃない)」などとしてしまっています。
上記のようなHSPを発信するサイトでは研究知見を無視して、サイト運営者が独自にHSP診断テスト・チェックリストを作成、公開しているケースもあります。
上記の画像はHSE型HSP(外向的なHSP)のチェックリストですが、HSE型HSPはそもそも学術的に実証された概念ですらありません。実質このサイト運営者がエビデンスもなく勝手に提唱してるようなものです。
独自にHSP診断テストなどを作っているのはもはや論外なので、見かけてもスルーしましょう。
例外としてはアーロン博士や論文などを引用していることですが、ほとんど見たことはありません。
このようなネット上のHSP診断テストは以下の記事でより深く考察しました。
自分がHSPかを確認したい場合
アーロン博士のつくったチェックリスト
実はアーロン博士のサイトがあり、そこに27個のチェックリストがあります。
サイト上では27個中14個以上当てはまったらHSPの可能性が高いとされていますが、HSPの提唱者アーロン博士が作ったものなので、一定以上の信用はできると思います。
ただし、最近はアーロン博士以外の研究者が主流ですし、アーロン博士のチェックリストをもとに新しいチェックリスト(尺度)も出てきています。
多少情報は古いですが、下手にネット上のHSP診断テストを使うよりはよっぽどマシですね。
手軽なので論文でハードルが高いと思ったらとりあえずこのチェックリストでいいかと。
また、アーロン博士に関しては上記のチェックリストに加えて『DOES』の概念まで理解できたらOKですね。
より改良されたHSP尺度
そして2022年には日本でHSPを研究している飯村周平さんらによって日本人向けの新たなHSP尺度の論文が発表されました。
論文によるとアーロン博士のチェックリストの27個の項目を新たに統計などをし直したら、HSPとあまり関係なさそうな項目もあったそうでそれらを削除し項目を10個に絞りました。
ちなみにその10個の項目は以下の通り。
- 生活に変化があると混乱しますか?
- 強い刺激に圧倒されやすいですか?
- 他人の気分に左右されますか?
- 短時間にしなければいけないことが多いとオロオロしますか?
- 競争場面や見られていると、緊張や動揺のあまり、いつもの力を発揮できなくなりますか?
- 大きな音と雑然とした光景のような強い刺激がわずらしいですか?
- 大きな音で不快になりますか?
- 明るい光や強いにおい、ごわごわした布地、近くのサイレンの音などにゾッとしやすいですか?
- 微細で繊細な香り・音・味・芸術作品などを好みますか?
- 美術や音楽に深く感動しますか?
たとえばアーロン博士のチェックリストにはあった「カフェインは苦手ですか?」はこの論文では除外されています。
HSPとカフェインの関係性は論文をもとに以下の記事で考察しました。
改めて統計を取ったら「HSPと関係なくない?」となったみたいです。
ちなみに僕は上記の項目は10番以外は全部当てはまるのでHSPの要素は強い方と思われますが、コーヒーは普通に飲めます。
こちらは〇個以上でHSPなどは特になく、どれくらい当てはまるかを見るもの。
あくまでHSPの要素がどれくらいあるかってことですね。
まとめ
- HSPあるあるやHSP診断テストの質問項目はだれにでも当てはまる項目も多い
- ネット上でよく見るHSP診断テストは信用できない
- 現時点で信頼できるHSPチェックリストはアーロン博士のサイトか研究論文内のチェックリスト(HSP尺度)
HSPあるあるなようで実はHSPじゃなくてもあることがけっこう多いので、実は僕も最近は自分から「私HSPなんです」みたいなことは言わないようにしています。
HSPだからどうこうというのはない。
HSPを通じて自己理解を進めたり、支援活動に活かしてほしいものですね。