著者:長池涼太:HSPの学び舎運営・HSP研究/エビデンスを発信するブロガー
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HSPを最近知った方がまず興味を持つのがHSP診断やチェックリストだと思います。
- 私ってHSPなのかな?
- HSPってどうやって確かめるのかな?
2020年にHSPがメディアに取り上げられてから目に付くようになったのが「カウンセラーにあなたはHSPと言われた」「病院でHSPと診断された」という話。
結論から言うとカウンセラーや病院がHSPを断言、診断することはなく、HSPかどうかについては今のところ自分で判断する(セルフチェック)しかありません。とはいえ、自分で判断といっても難しいと感じるかもしれません。
今回の記事ではHSPのセルフチェックについて良い方法、悪い方法を解説しました。
HSPは病院やカウンセラーが診断はできない
SNS上で「病院でHSPと診断してもらった」とか「私ってHSPですか?」という文言や問い合わせなどがありますが、現状HSPかどうかの判断はセルフチェックのみになります。少なくとも病院などの医療機関やカウンセラーなどの他人が「あなたはHSPです!」と断言や診断をすることは本来ないです。
そのため自分がHSPか(どれくらいHSPの要素があるか)は、自分で判断するしかないのです。
そもそも精神科医含めて医者はHSPの専門家ではありませんし、カウンセラーも今や無資格者やレベルの低い資格の人が大半ですからね…。
ちなみにカウンセラーは最低でも『公認心理士』『臨床心理士』『産業カウンセラー』は所持しているかはチェックしましょう。
ネット上のHSP診断テストの大半は使えない
HSP診断テスト、HSPのチェックリストというとGoogle検索などで見たことがある人も多いかと思います。
ただ、ネット上に見られるHSP診断テストのほとんどは質が低いです。
理由は、
- 研究などおおもとの知見を無視して独自の理論で作られてる
- そもそも作成者がHSPの専門家ではない(有資格者もいるが通信など誰でも取れるレベル)
- 質問項目が精神疾患や発達障害など別の話も混ざっていることもある
などで特にサイト運営者が独自の理論でHSP診断テスト・チェックリストを作っているパターンが多いです。公式のチェックリストなどを引用するなら良いのですが、現状は独自のHSP診断テストが多く利用者にとっても正確な判定ができないので良くないです。
Googleなどで検索したときに上位に出てくるものが多いですが、意外とそういうものほど信用できないかも。
オススメできるであろうHSPチェックリスト
そんなわけでネット上にある大半のHSP診断テスト・チェックリストは使うにしても鵜呑みにしないことをオススメします。
Googleで「HSP」と検索すると、上位に「HSP診断テスト」というサイトが表示されます。このサイトで自身がHSPかどうかを判断される人が多いようです。しかし、このサイトの項目は研究で用いられているものではありません。また、明らかに感受性の個人差を測定するものではない項目も含まれます。さらに判定基準も不明です。したがって、学術的には、信頼性と妥当性が不明瞭なテストだといえます。
HSPの功罪|Japan Sensitivity Research
「じゃあ、どうやって自分がHSPかどうか確認するの?」と思うかもしれませんが、確認する方法や使えるHSPチェックリストはあります。
アーロン博士のチェックリスト
一番手っ取り早いのがHSPの提唱者でもあるアーロン博士のサイト内にあるHSPチェックリスト。これは作成者がアーロン博士本人ですし、チェックリストも論文としてちゃんと発表されています。
この後紹介する最近の研究論文のHSPチェックリストなどもアーロン博士が作ったものがベースになっているので、とりあえず使うならアーロン博士のサイトが良いと思います。シンプルに当てはまるものにチェックを入れるだけですからね。
あえて問題点を挙げるとすれば、上記のアーロン博士作のチェックリストは作られたのが1996年ごろと20年以上前です。
チェックリストの項目そのものが間違っているわけではないですが、最近はアーロン博士以外にも様々な研究者が出てきて、論文を通じてより新しい知見を発表しています。
特に2015年以降は、日本人のHSP研究者も出てきました。
現在も国内に数名ながらいます。
より精度の高いHSPチェックリストを使いたい方は以降に紹介する、最近のHSPチェックリスト、しかも日本人にアレンジされたものを使うとより良いです。
研究論文内のHSPチェックリスト
アーロン博士もそうですが、HSPの研究者が発表した論文の中にもHSPのチェックリストはあります。
厳密には『環境感受性』の強弱を判定するものです。
HSPは本来、『環境感受性の高い人の上位30%くらい』を『便宜上』指しています。生きづらさや不登校の指標ではありません。とはいえHSPかどうかの明確な境目や基準があるわけでもないので、HSPかどうかよりも『環境感受性がどれくらい高いか?』がポイントになります。
ここから紹介する論文内のチェックリストもHSPかどうかよりも『環境感受性の高さ』を測定しています。 いずれの論文も無料で閲覧できます。
HSPの研究者の中には『HSP』『非HSP』といった区別自体を推奨しない方もいます。
個人的にこの考えには賛成です。
大人用(HSPセルフチェック)
中央学院大学大学院心理学研究科の高橋亜希さんが2016年に公開した論文内にあるチェックリストです。アーロン博士が作ったチェックリストは質問項目が27個でしたが、この論文は日本人向け(特に大学生以降)にアレンジするために統計を改めて取り、質問項目を19個に絞り込みました。
例えばHSPあるあるでもよく見かける「カフェインが苦手」という項目は外されています。現在、日本におけるHSPのチェックリストとしては一番公式に近い立ち位置です。
HSPに該当する人でカフェインが苦手な人はいるでしょうが、原因がHSPとは別にあるのかもしれませんね。
元々の体質か、アレルギーか。ちなみに僕はカフェインは平気で、コーヒーも大好きです。
HSPとカフェインの関係性は以下の記事で考察しました。
小学生用(HSCセルフチェック)
東京家政大学人文学部の平野真理さんとお茶の水女子大学・人間発達教育科学研究所の岐部智恵子さんが2020年に公開した論文。HSPのチェックリストの中でも、特に小学生向け(特に3年生から6年生)に作られたものです。
2ページ目にあるチェックリストの質問項目も12個とアーロン博士が作ったものより減っていますが、こちらもやはり統計などをきっちりとった上での12個のようです。
中学生・高校生用(HSCセルフチェック)
東京家政大学人文学部の平野真理さんとお茶の水女子大学基幹研究院の岐部智恵子さんが2019年に公開した論文です。論文中の5ページ目にチェックリストがあり特に中学1年生から高校1年生向け。質問項目はさきほどの小学生用とさほど変わらないようです。
診療内科、メンタルクリニックはHSPではなく精神疾患の話
ここまで論文中のHSPチェックリストを紹介しました。とはいえ、ネット上を探して目に付くのは特に心療内科やメンタルクリニックといった医療機関が作ったチェックリストかと思われます。
ただ、医療機関が作ったHSPチェックリストは本来のHSPとズレが生じていて、
- HSPの話にしてもネガティブなものしか触れてない
- 「憂鬱な気分が続く」「食欲がない日が続く」
といった質問はHSPではなく精神疾患など何らかの病気の可能性が高いです。これらの質問にあてはまる場合は病院の受診をオススメします。
「HSPだから頭痛が起こりやすい」など、HSPだから起こりやすい『症状』は今のところありません。
病院を利用する場合は『HSPうつ』『HSP外来』などHSPという文言のない精神科、メンタルクリニックが良いです。
HSS型HSP診断テスト(チェックリスト)について
SNS上で見かける『HSS型HSP』。「好奇心旺盛」「刺激追求」の要素を持ったHSPということで、HSS型HSPのチェックリストもアーロン博士のサイト内に存在します。ただし注意してほしいのは、
- HSS型HSPはこのサイト以外に公式の情報が無い
- アーロン博士以降、研究で実証されてない(論文が存在しない)
- アーロン博士が言うHSS型HSPも確立された概念でなくあくまで仮説段階
と言う感じで、HSS型HSPは概念として確立されたものではありません。
もちろんHSPのなかで好奇心旺盛や刺激追求っぽい人もいるでしょうが、あえて通常のHSPを区別する必要はあるのでしょうか?
ちなみに外向的なHSPとして『HSE型HSP』という呼び名もありますが、こちらも概念としては確立していなかったり特に研究論文では言及されていないので注意が必要です。
HSP・HSCはセルフチェックだからこそ気を付けよう
- HSPを病院やカウンセラーが診断することはない
- HSPかどうかの判断は現状はセルフチェック(自己判断)のみ
- ネット上の大半のHSP診断テストやチェックリストはサイト運営者(心理学素人)が独自に作ったもののため信頼性に欠ける
- 現状信頼できるのはアーロン博士のサイトにあるものか研究論文内のチェックリスト
- 研究論文は大人、小学生向け、中学・高校生向けと細分化されており子供向けにも良い
- 医療機関のサイトにあるHSPチェックリストは鬱などの精神疾患の話が混ざっている
- HSS型HSPやHSE型HSPは概念自体の信憑性が乏しいため、オススメできない(HSSについてはアーロン博士のサイトにあるものは一応OK)
HSPは発達障害や精神疾患などと違って、病院など他人が「あなたはHSPです!」みたく診断や断言をすることが原則ありません。そのため自己判断しかないですが、だからこそ判断が難しい部分もあります。
HSPを適切に自己理解などにつなげるためにも、なおさらHSPの『正しい理解』は重要です。ぜひHSPの正しい理解を通じて、自己理解に活かして支援活動や生きやすさにもつなげましょう。