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HSPと発達障害、何が違うの?研究が示す「生きづらさ」の正体と自分を大切にするヒント

HSPと発達障害の違い

著者:りょうた:HSPの学び舎運営・HSP研究/エビデンスを発信するブロガー

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「自分はHSPなのかな?それとも、もしかして発達障害…?」

人一倍、音や光に敏感だったり、他人の感情に深く共感して疲れてしまったり。そんな繊細さを持つあなたが、自分のことをもっと深く知りたい、生きづらさの理由を知りたいと思うのは、とても自然なことです。その感覚は、決して「おかしいこと」ではありません。

この記事では、HSPと発達障害の関係についての最近の研究を、心を込めて優しく解説します。目的は、あなたに特定のラベルを貼ることではありません。研究が示すヒントを通じて、あなたがもっと自分を理解し、大切にするための方法を見つけることです。

なお今回の記事は熊本大学の菊池哲平さんが出した「HSPと発達障害は区別可能なのか?」を参照にしています。

HSPと発達障害の違い

記事の内容を動画でもまとめています。

HSPとは「良くも悪くも環境に影響を受けやすい人」

HSP(Highly Sensitive Person)あるいはHSC(Highly Sensitive Child)とは、環境感受性がとくに高い人たちを表すラベルです。HSPは「生きづらさ」を表すラベルではなく、「良い環境と悪い環境から、良くも悪くも影響を受けやすい人」として理解されています。

環境感受性とは?​HSPの考え方を知る|Japan Sensitivity Research

HSPは「環境に良くも悪くも影響されやすい人」とされており、基本的に発達障害とは違う立ち位置とされています。「HSPは発達障害のグレーゾーン」という意見も見られますが、現状はそのようなこともなく誤解とされています。

発達障害は病院で診断されるなど医学の話も絡みますが、HSPは病院で診断などはできず心理学の分野である点も発達障害とは異なります。また、後述の発達障害と違いHSPは「障害」の立ち位置にはありません。

涼太
涼太

ごく一部ですがHSPで金儲けをしたり、「HSP○○」のような診療科目を設けたり医療行為をするグレーな医療機関もいるんですよね。

発達障害とは「脳機能の障害」

第二条   この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。

2   この法律において「発達障害者」とは、発達障害がある者であって発達障害及び社会的障壁により日常生活又は社会生活に制限を受けるものをいい、「発達障害児」とは、発達障害者のうち十八歳未満のものをいう。

3   この法律において「社会的障壁」とは、発達障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。

発達障害者支援法(平成十六年十二月十日法律第百六十七号)|文部科学省

発達障害にも種類があり主に『注意欠陥多動性障害(ADHD)』や『自閉症スペクトラム障害(ASD)』『学習障害(LD)』があります。発達障害は病院で診断される点や脳機能の障害である点はHSPとの大きな違いです。

HSPと発達障害、似ていると言われるのはなぜ?

HSPと発達障害、何が違うの?

多くのウェブサイトでは、「HSPは病気ではなく生まれ持った気質であり、脳の機能が関係する発達障害とは異なります」と説明されています。これは一つの一般的な考え方です。

しかし、2022年に熊本大学の菊池哲平氏が出した研究論文では、この関係に新しい光を当てています。この研究では、900人を対象にした大規模な調査が行われました。その結果、HSPの特性が強い人は、ASD(自閉症スペクトラム)やADHDの特性もあわせて持つ傾向が強いことが分かりました。まるで、見た目は違う種類の花でも、同じ豊かな土壌で一緒に育っているようなイメージです。

さらに、この研究で特に注目すべきは、調査対象者の中でも特に特性が強いとされた人々の中で、「HSPの特性だけが際立って強く、発達障害の特性は見られない」という人が一人もいなかったことです。これは多くの人が感じている「どちらの特性も自分に当てはまる気がする」という感覚を、データが力強く裏付けているのかもしれません。

ラベル以上に大切なこと:今日からできる3つのセルフケア

研究結果が示すように、自分で「HSPか、発達障害か」をはっきり区別するのは難しいかもしれません。だからこそ、診断名にこだわるよりも、今の自分を少しでも楽にすることに目を向けてみませんか?今日からすぐに始められる3つのヒントをご紹介します。

ラベルではなく「今の自分の状態」に注目する

「HSPだから疲れた」「ADHDだから集中できない」と考える前に、一度立ち止まってみましょう。「今、大きな音に圧倒されて疲れているな」「人との会話でエネルギーを使い果たしたな」というように、具体的な事実や感情に焦点を当ててみるのです。原因探しよりも、まず「今の自分」の状態を認めてあげることが、セルフケアの第一歩です。

刺激をコントロールする「自分だけの聖域」をつくる

研究の調査項目にも「忙しい日々が続くと、刺激の少ない場所に逃げ込みたくなる」というものがありました。これは、あなたにとってごく自然な反応です。自宅に静かな音楽だけが流れるコーナーを作ったり、外出時にはノイズキャンセリングイヤホンを使ったりして、意識的に刺激を遮断する時間を作りましょう。それは「逃げ」ではなく、自分を守るための大切な戦略です。

「豊かな内面」という強みを慈しむ

研究では、HSPの特性として「美的感受性」や「豊かな内面生活」といった側面が示されています。芸術や音楽に深く感動したり、物事をじっくりと考え抜いたりする力は、あなただけの素晴らしい宝物です。

研究ではこの「美的感受性」が、他者とのコミュニケーションに関する特性と結びつきやすいことも示唆されています。一人の世界に深く没頭できるからこそ、人とのやり取りに難しさを感じることがあるのかもしれません。それは表裏一体の、あなただけの個性なのです。

知っておきたい注意点:セルフチェックとの向き合い方

自分を知るために、Web上のチェックリストを試したことがあるかもしれません。それは素晴らしい探求心ですが、研究者は、自己判断には注意が必要だと強く警鐘を鳴らしています。その理由を一緒に見ていきましょう。

WebのHSPチェックリストの限界

自己回答式のチェックリストだけで、HSPと発達障害の特性を正確に見分けることは非常に難しいのが実情です。チェックリストはあくまで自分を知る「きっかけ」の一つとして捉え、その結果に一喜一憂しすぎないようにしましょう。

涼太
涼太

研究論文内で用いられるチェックリストは問題ないですが、そこ以外のたとえばメンタルクリニックなどで用いられるHSPのチェックや診断テストはあてになりません。

適切なサポートを逃す可能性

もし、あなたの生きづらさの背景に発達障害の特性が隠れている場合、「自分はHSPだから」という自己認識だけで完結してしまうと、本来必要だったかもしれない支援や配慮が見過ごされてしまう可能性があります。自分を誤解することで、かえって苦しい状況が続いてしまうのは、とても悲しいことです。

実際自分の周り、特にお子さんが発達障害っぽい特徴があったとしても「うちの子はHSPなので!」と言って発達障害の検査すら受けさせない親御さんもかなりいました。

専門家への相談という、前向きな選択肢

もし、日常生活に大きな困難を感じていたり、仕事や人間関係で深く悩んでいたりするなら、専門の機関に相談することも一つの大切な選択肢です。それは「診断名をもらう」ためだけではありません。あなたの「心の取扱説明書」を、専門家と一緒に探していくような、前向きな一歩です。一人で抱え込まず、専門家の知恵を借りることで、新しい道が開けることもあります。

なお、HSPに関しては「HSP○○」のような自称専門家がネットなどに無数にいますが、発達障害と違いHSPの専門家はHSPの研究者・学者以外には現状いない点にご注意ください。

まとめ:どんなあなたも、そのままで素晴らしい

HSPであっても、そうでなくても。発達障害の特性を持っていても、いなくても。あなたが日々感じていること、悩んでいることは、決して間違いではありません。研究が示すように、人の心や特性は、単純なラベルでは分けられないほど複雑で、豊かです。

大切なのは、完璧な答えを見つけることよりも、今日の自分を少しだけいたわってあげることです。

まずは、ゆっくりと深呼吸をひとつ。 それだけでも、あなたにとって素晴らしい一歩です。

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