著者:長池涼太:HSPの学び舎運営・HSP研究/エビデンスを発信するブロガー
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みなさんは学生時代、「体育」は得意もしくは好きでしたか?
僕はスポーツだと特に野球が好きですが、体育の授業は好きかと聞かれると微妙なところでした。学生時代も運動神経でいうと中の下くらいだったので、体育はどちらかというと苦手な部類でした。特に運動がすごく苦手な人にとっては体育の授業が苦痛だったなんて方もいたかもしれません。
今回の記事はそんな体育の授業に関してHSP(HSC)の視点も交えながら、体育の授業はこうなるといいみたいなことを解説しました。
体育の好き嫌いはハッキリ出る
体育嫌いから運動嫌いへ
学校の体育の授業については「やや嫌い」「嫌い」と3割以上(31.1%)が回答(Q3)。「運動やスポーツ」よりも「嫌い」である傾向がやや強い。また、小中学生別にみると、「やや嫌い」「嫌い」と答えた割合は小学生が2割以上(24.0%)であったのに対し、中学生は4割弱(38.0%)という結果に。心身の成長に伴い“体育の授業嫌い”がより顕著になるのかもしれない。
小中学生の2割以上が「運動嫌い」理由は“人と比べられることが嫌”?――JA共済連「小中学生の運動に対する意識調査」
教科の好き嫌いの調査はネット上に無数にありますが、基本的に体育が嫌いな生徒は2~3割以上はいるという結果がほとんどで、特に体育が嫌いになることで運動・スポーツそのものまで嫌いになってしまうという懸念もあります。
ただし体育は運動神経が良い、スポーツが得意な子は体育が好きな子も多く、体育の好き嫌いは両極端になりますね。
僕も小中学校の体育は種目によっては苦手意識があった
そういう僕も特に小中学校の体育は好きかと微妙なところでした。個人的に野球・ソフトボールは好きだったり、テニス部だったのでテニスはそれなりにできましたが、他の球技や跳び箱やマット運動といった器械体操的なものは大の苦手でした。そのため自分が得意な種目であれば楽しみでしたが、苦手な種目は「やりたくないなぁ」と思ってました。
特に跳び箱は5段すら飛べるか怪しかったため、毎回跳び箱の授業前は胃が痛くなるような思いでした。
あと、一般論やイメージとして「体育の先生は怖い先生が多い」のもあるかもしれませんね。
ちなみに高校と大学の体育は割と好きでした。高校と大学は球技が主でしたが、技能を上げるというより純粋にその種目を楽しむみたいな感じだったため、体育の授業でありつつ遊び感覚でやっていることもありました。加えて高校と大学は勉強ばかりやってるような学生だったため、体を動かす体育はむしろ気分転換になって良かったです。
体育の授業におけるHSPの子(HSC)の傾向
では、HSPの子ども(HSC)にとって体育とはどのようなものなのか?北海道教育大学の研究で中学生約400人を対象に中学生用感覚感受性尺度(SSSI)を用いて「HSP」「非HSP]と分けたうえで体育に関する質問紙調査を行いました。
感覚感受性尺度、要はHSPのチェックリストに近いものです。
HSP群の好きな運動領域の回答を分析した結果,1位が「ダンス」,2位が「球技」,3位が「体つくり運動」,4位が「陸上競技」,5位が「器械運動」,6位が「水泳」,7位が「武道」であった。また,嫌いな運動領域の分析結果では,1位が「陸上競技」,2位が同着で「体つくり運動」と「水泳」,4位が「器械運動」,5位が「武道」,6位が「ダンス」,7位が「球技」であった。
中学校体育授業におけるHSP傾向の生徒の実態 : 体育授業に関する質問紙調査の結果から
次に,非HSPの好きな運動領域の回答を分析した結果,1位が「球技」,2位が「陸上競技」,3位が「ダンス」,4位が「水泳」,5位が「体つくり運動」,6位が「器械運動」,7位が「武道」であった。また,嫌いな運動領域の分析では,1位が「ダンス」,2位が「器械運動」,3位が「水泳」,4位が同着で「体つくり運動」と「陸上競技」,6位が「武道」,7位が「球技」であった。
その中で好きな体育の種目ではHSPと非HSPで特に「ダンス」に関して好き嫌いの差が出たとのことでした。簡単にいうとHSPの人はダンスが好きな人が多く、非HSPの人はダンスが嫌いな人が多かったという結果でした。
HSPの人がダンスが好きな理由に関しては、ダンスは野球などの球技と違って勝敗を競う要素があまりなく「表現活動」としての要素が強いです。また球技などの勝敗を競うタイプだと、例えば自分がミスをして負けたときに非難を受ける可能性もあります。ただ、ダンスの場合は球技ほど勝敗や優劣など競う場面があまりないため、不安を覚えづらいといった理由が考えられます。
体育の教育指導要領において
体育に限らず各教科についてどのような学習を進めていけばいいかなどを定めた「学習指導要領」が存在し、原則学校の授業は学習指導要領に沿ってやるものとされています。その中で例えば中学校の保健体育の学習指導要領では以下のように目標が定められています。
体育や保健の見方・考え方を働かせ,課題を発見し,合理的な解決に向けた学習過程を通して,心と体を一体として捉え,生涯にわたって心身の健康を保持増進し豊かなスポーツライフを実現するための資質・能力を次のとお
【保健体育編】中学校学習指導要領
り育成することを目指す。
(1)各種の運動の特性に応じた技能等及び個人生活における健康・安全について理解するとともに,基本的な技能を身に付けるようにする。
(2)運動や健康についての自他の課題を発見し,合理的な解決に向けて思考し判断するとともに,他者に伝える力を養う。
(3)生涯にわたって運動に親しむとともに健康の保持増進と体力の向上を目指し,明るく豊かな生活を営む態度を養う。
僕の小中学校の体育もそうでしたが、一般的に体育の授業というと
- 跳び箱7段を飛べるように
- 逆上がりができるようになる
- クロールで25m泳げるように
など「○○ができるように」みたいにいわゆるノルマみたいな形で何かに挑戦するイメージが強いかもしれません。ただ、学習指導要領に目を通した感じだと具体的に何かができるようになるような文言は見当たらない印象でした。
学習指導要領で「逆上がりができるようになる」など具体的な目標について言及してなかったのは意外でした。
学習指導要領的には運動のスキルを上げるというよりは運動の楽しさを知ったり、心身の健全な発達に重きを置いているため、必ずしも運動・スポーツのスキルが高くなければいけないわけではないです。
体育もそうですが、学校教育において部活動の立ち位置も曖昧な部分がありますね。
HSP(HSC)だからといって特別なことは必要ない
今回取り上げた北海道教育大学の論文ではHSP(HSC)の人の体育に対する考え方がメインでしたが、では体育の教員など大人はどのような体育の授業を心がければいいのか?
僕の主観も含みますが、体育の授業で心がけることは以下の3つと考えました。
- 個々のペースに合わせた運動指導
- 周囲とのコミュニケーションを促進する活動
- 自己肯定感を高めるための声かけ
ただこれらのことってHSP関係なく体育の授業としても非常に重要なことだと思います。実はHSPだからといって特別なことや高度なことをする必要はなく、学習指導要領などに沿ったり子どものことを考えた授業を心がければHSPだろうがそうでなかろうが良い授業になるのかもしれません。
まとめ
- 体育の授業は好き嫌いがはっきり分かれることが多い
- HSPとそうでない子でダンスの好き嫌いは他の種目よりはっきり分かれた
- 体育の学習指導要領において具体的に「○○ができること」と定められてはおらずそれよりは楽しむ要素を重要視している
- HSPだからといって特別に配慮するというよりは、学習指導要領に沿っていい授業をすればHSPでもそうでもなくても馴染みやすい授業になる
論文上でHSPの人とそうでない人の間で体育の好みなど傾向の違いは見られましたが、結論としては「個々のペースに合わせる」「周囲との協力」などある意味ありきたりになった感じがしました。
その点ではある意味HSP(HSC)だからといって特別な配慮をするというよりは、学習指導要領に基づいて本当の意味で子供のためになる授業をすればいい話な気がしました。